焼却炉の友達

小学校の時です。ネチネチといじめてくる男子生徒がいました。給食のお皿を持って並んでいるときも後ろから誰がやったかわからないようにつねったり、蹴ったり。痛いし悲しいし誰がやったのかみんな見ているのに黙っていました。
私はその当時あった焼却炉に毎日泣きに行きました。教室にいるとまたいやな目にあうかもしれないからです。
焼却炉のゴミの焼けるにおいと泣きすぎてぼうっとした頭とで架空のお友達を作り出していました。「れいこちゃん」という女の子です。私は小学校の高学年の二年間をこのれいこちゃんと過ごしました。れいこちゃんに嫌なことを話すと何もかも忘れられたのです。
嫌いな先生の事も、いじめてくる男子生徒のことも、しらんぷりをするクラスメイトのこともすべてれいこちゃんに話しました。「みんな、もえたよ。いないんだよ」とれいこちゃんはいいました。私はクラスの子のかたちに切った折り紙の人形を焼却炉で燃やしました。
「みんな燃えてしまって、いないんだ」と思うと何もかもが空気のように透き通って風景のように見えました。
全然平気でした。もうれいこちゃんは出てこないけれど、小学校の焼却炉のことは絶対忘れません。

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